「声」というものを科学的に知りたくなり、本書を読了しました。英語の発音をしたり、歌を歌ったりする体験が多く、もっと「声」について説得力のある形で知りたいと思ったからです。
声はその人を表現する、と本書は語ります。なぜなら、声とは脳で起こり、それを声帯と聴覚により表現する複合体だからです。このとき、「聴覚フィードバック」により、声は安定的になります。声は心理のみならず、身体、そして生きざまを表している所以がこの通りです。
われわれは「声をつくってよくする」ことより、「本物の声」を知る必要があるとも記されていました。声に精通のある人は決して、他人の声を批判しません。それは他人の人格を批判することを意味するからです。
本書は歴史的な記述も豊富でした。たとえば、西洋は石造りの家の伝統があり、声を大きくする必要がない傾向にあったため、低い声を発する人が多い。また、日本人は三味線などの楽器が象徴するように、「雑音」が入った声を心地よいと考える根がある、などなどです。
これらの科学的なアプローチを質的にみるならば、たとえば「聴覚フィードバック」は認知言語哲学のいうような「労力と効果のバランス」を安定させるような声質で定まる傾向にある、などと言えそうです。人間は認知環境に様々な声をインプットしています。それらが相互作用を起こし、「声」として世界に表現されるとも言えそうです。声について、一枚岩ではなく、多角的に考えていきたいと思います。