和泉敏之の質的研究会

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コミュニケーションの水源地

コミュニケーションの水源地

―関連性理論と社会システム理論によるコンテクスト概念の考察-

 

 和泉 敏之

 

本小論では、コミュニケーションについて論じる。関連性理論では「コンテクスト」の概念が一般的なものとは異なる。コンテクストは他者からの言語をはじめとした刺激に対して、少ない労力と大きな効果を期待して、記憶、状況、文脈などから解釈のために得られる概念である。だが、このコンテクスト概念は文化などの概念に対する記述が不十分である。ここにルーマンの社会システム理論を導入する。コミュニケーションとは、コンテクスト形成によって起こる、複雑性の縮減のための意味理解と解される。意味は文化からコミュニケーションに方向付けのための選択を促し、コミュニケーションは接続していく。以上の予備的考察をもとにすると、コンテクストは意味の機能が集約されていく生態と考えられる。以上の観点から、日本の英語教育におけるコミュニケーションの洞察を深める試みを行うのが、本小論の目的である。

 

参考文献

ルーマン著、馬場靖雄訳(2020)『社会システム(上)(下)』勁草書房

Wilson. & Sperber. 2012. Meaning and Relevance. Cambridge.