英語教育の質的研究会

和泉敏之による英語教育に関するコモンです。

英語のゲーム(1):疑問詞

デートに誘う(疑問詞を使用したゲーム)

 

when, where, who, what, which, why, how などの疑問詞は入門期の段階で学ぶ重要な文 法事項です。これを使いこなせるようになることが、その後の英語学習をどう変えるかのカギとなる ほどです。今回は、このような疑問詞を用いたアクティビティとして、「デートに誘う」というものを取り 上げたいと思います。

 

まず、疑問詞の形式と意味をしっかりと学ばせる必要があります。疑問詞は 「5W1H」などの国語科の知識を活用して、一度に提示することが大切です。また、疑問詞を使った疑問文は答えとなる品詞が変形していることも押さえましょう。

 

そして、実際の言語 使用のゲームです。学習者に同性同士でペアーを組ませます。男子一女子は抵抗があると思うので、同性同士で盛り上げると良いでしょう。クラスのムー ドメーカー的な男子に後で、教卓のところで実践してもらっても良いかもしれません。ただし、あらかじめ教室にlgbtq+の当事者の生徒がいたら注意が必要です。それぞれ、学 習者にワークシートを配布しておきます。これにはデートは「いつ、どこで」行うかということと、「何 をもっていけば良いか」ということと、「2人きりで行くか、それともだれか誘うか」などを記入させます。 そして、これを基に、ペアーでデートを誘うゲームを行います。2人ペアーともう1人ジャッジを担 当する学習者がいても良いでしょう。学習者は「いつだったら空いている (When are you free?)」や 「どこに行く(Where do we go to?)」などと聞き、相手はじらしながら、それに答えていきます。最終 的に2人きりでデートに行けるようになったら成功です。

 

1人目のターンが終わったら、パートナー と役割を交代して、デートに誘う活動を続けます。「want to~(~したい)」という未習事項も、「want to go to~(~へ行きたい)」のように提示しておくと、後々に不定詞を学ぶときの橋渡しにもなりま す。ジャッジにどちらの方が説得力があったかを判定してもらい、ゲームは終了です。

ファンタジー当事者研究の試み

ChatGPTをメンターとして見立て、当事者研究をしてみました。自身の自伝的な文章をもとにファンタジーのお話を創ってもらい、そのメタファーを解釈し、お話を改訂していくことにより、自身を内省的に見つめる試みです。よければご笑覧ください。

 

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以下の文章はChatGPTが生成した文章に自分なりに加筆したものです。

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それでは、敏之を主人公にしたファンタジー物語を創作します。この物語は、現実と幻想が交錯する異世界を舞台に、彼の成長と冒険を描いた作品です。

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### タイトル: **「風の魔法使い 敏之」**

#### プロローグ
 敏之 は、大学で平凡な学生生活を送っていた。しかし、ある日突然、母からの一通の手紙が彼の運命を変える。その手紙には「お前の本当の力を知る時が来た」と書かれていた。興味をそそられた敏之は、手紙に書かれた指示に従い、母が住む山奥の古い家を訪れることにした。

 

#### 第一章: 異世界への扉
敏之が母の家に到着すると、母は彼に一つの古びた鍵を手渡す。「この鍵は、お前に隠された力を解き放つためのものよ」と母は言った。敏之は半信半疑ながらも、その鍵を使って家の地下室にある秘密の扉を開けた。扉をくぐると、そこには幻想的な風景が広がっていた。敏之は異世界アルカディア」に迷い込んでしまったのだ。

 

#### 第二章: 風の精霊と出会い
アルカディアの森を彷徨う敏之は、奇妙な光を放つ風の精霊「アイリス」と出会う。アイリスは、敏之がこの世界に来たことを歓迎し、彼が「風の魔法使い」として選ばれた存在であることを告げる。アイリスによると、アルカディアは闇の魔王「カダス」の侵略に脅かされており、敏之の力が世界を救う鍵となるというのだ。

 

#### 第三章: 旅の仲間と試練
敏之はアイリスの導きで、旅の仲間たちと出会う。剣の達人「ガレオン」、水の魔法使い「マリーナ」、そして火の戦士「レイヴン」。彼らと共に、敏之は各地を巡りながら、失われた風の魔法の力を取り戻すための試練に挑む。だが、敏之を仲間たちはただ英雄にしたてあげ、利用しているだけだという悪夢をみる。それにより、敏之は呪いにかかってしまう。仲間たちは敏之のもとを去っていき、夢は本当だったと信じ込む。

 

#### 第四章: ゆきとの再会
ある日、宿のベッドに横たわる敏之のもとに、不思議な女性「ゆき」が訪れる。ゆきは彼の幼少期に一度出会ったことがあり、その時から彼を見守っていた存在だった。ゆきは、敏之に母の手紙の真実を教えた後、彼の心の迷いを解き、さらに力を引き出すための導きを与える。


#### 第五章: 闇の魔王との決戦
やがて敏之は仲間たちと再会を果たす。そして、闇の魔王カダスの城に到達する。カダスは、世界を支配するために風の魔法を奪い取ろうとしていた。壮絶な戦いが起き、カダスは仲間たちにバリアをかける。自分と仲間の命どちらがほしいかと敏之は迫られる。敏之は仲間たちの反対する声を無視して、自分に風の魔法を突きつける。敏之はみるみる弱まっていくが、それでも風を打ち付ける。それをみたカダスは力が減退していく。世界を支配するためには、敏之のエネルギーが必要だったからだ。やがてバリアが剥がれ落ち、仲間たちはカダスを倒す。敏之は息絶える寸前だったが、ゆきにキスされエネルギーが戻る。こうして、アルカディアに再び平和が訪れた。

 

#### エピローグ: 現実世界への帰還
カダスを倒した敏之は、アルカディアでの役割を果たし終え、元の世界に帰ることを決意する。彼はアイリスや仲間たちと別れを告げ、異世界のゆきに見送られながら、異世界の扉を通って現実世界に戻る。敏之は、母が彼に託した秘密の意味を理解し、これからの人生を新たな視点で生きていく決意を固めた。


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### 主要キャラクター
- **敏之**: 主人公。風の魔法使いとして異世界アルカディアで冒険を繰り広げる。
- **アイリス**: 風の精霊。敏之を導き、風の魔法の力を授ける。
- **ガレオン**: 剣の達人。仲間たちのリーダー的存在で、敏之を助ける。
- **マリーナ**: 水の魔法使い。冷静沈着な性格で、魔法の知識も豊富。
- **レイヴン**: 火の戦士。熱血漢であり、敏之を支える兄貴分。
- **ゆき**: 謎めいた女性。敏之の幼少期に一度出会い、彼を見守っていた。
- **カダス**: 闇の魔王。アルカディアを支配しようと企む邪悪な存在。

### 物語のテーマ
この物語は、自己発見と成長、そして仲間との絆をテーマにしています。敏之が自分の力と使命を見つける過程を通じて、読者は自己肯定と新たな挑戦への勇気を感じ取ることができるでしょう。

 

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ふりかえり

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こうしてみると自分という単体 あるいは個体のことを考えるよりも自分を取り巻く あらゆるものを含む自分の人生というものを 物語として考えることが大事なんだと思いました。やはり自分は本質主義的な価値観 よりも 構築主義的な価値観の方を重視したいと思います。また 今回のリフレクションを通じて、改めて自分のためには家族や 友人など他者が必要であると感じました。これは大学の時に先輩に言われたことなのですが、その時も自分の半生を振り返って共有していた時のことです。君は思い出を振り返る時に友達を本当に重視してるんだねと言われたのです。私は内向的な性格でもあり、不器用な気質を持っているため、改めてそういう自分を取り巻く 他者が必要なんだと感じました。そしてもう一つ 重要なことは、私にとって 物語るということは ある意味 生きるということと同価値であるということです。今回のリフレクションを踏まえてファンタジーの物語の中の「敏之」のように 違った視点から人生を送りたいと思っています。

 

 

日記(2024. 06. 18)

私がこの世で一番尊敬するロックバンドである LUNA SEA が 香川に来てくれました。香川県は県民性により ライブも少し大人しくなるのかな と最初は思っていました。しかし ライブが始まると 1階席は 総立ち。観客席から叫ぶ声が次々に聞こえ、大盛り上がりとなりました。まるでホールがライブハウスのようになり、ライブとはこういうものなんだと 改めて痛感しました。今回は1996年のツアーがモチーフだったので、リアルタイムでそれを拝見してなかった 私にとっても、隣に座る母にとっても貴重な 素晴らしい時間を共有できたと思います。本当にありがとうございました。

 

さて ギターのSUGIZO さんがみんないつ 命が燃え尽きるかわからない。だから今この瞬間に全力を尽くす、そう言っていたのが印象的でした。私も最近はあちこちが病気になり、はっきり言って いつまで生きられるのか自分でも見当がつきません。だからこそ自分という人間だからできること、残せること、後世に伝えられることはないかと ずっと考えてきました。そんな中 今日 伝記 漫画で高村光太郎紫式部の人生を読んでみました。芸術という共通のくくりではあるものの、まるで違った人生を歩んだ二人。しかしその中にある思いはやはり 共通しており、それぞれの創造性や 想像力を活かして、文化という遺産を残した偉人 2人の人生を垣間見ました。

 

私も彼らほどにはなれないものの、LUNA SEAのライブも通過したため、これからは自分の余生を芸術とともに生きようかなと思いました。それが自分らしく自分が生き生きとする時間を過ごせると思ってきた次第であります。前に前に走るのも素晴らしい人生だとは思いますが、私には性に合わない。慎重にもっと周りのことを見つめながら 周りのことを大切にしながら自分のことも大切にしていく人生が尊いと思うに至りました。そういうこともあって最近は 詩を書いています。小さい頃から 詩を読むことはよくありました。また中学校3年生の時にコーラス部に入って 合唱の曲の詩を楽しむ習慣もありました。そうした人生において築いてきた特性もあり、私は詩と物語 を中心とした広い意味での文学 あるいは 芸術 を楽しみながら残りの人生を生きていきたいと思います。

 

和泉敏之 って何をした人?もしそうやって 私の子孫が話とすれば、文学と芸術に身を投じた人だと言ってもらえるように 自分のペースで頑張りたいと思います。人は一人では生きられないため、私の家族と相棒である ゆきと一緒にゆっくりと楽しく人生をますます 味わっていきたいと思います。

 

#LUNAPIC

外国語(英語)の知覚と認識に関して

よく外国語(特に英語)の知覚と認識において、以下の単純化されたモデルが提示されます。

 

音声→文字→意味

 

この提示方法はこれで有益だとは思います。しかし、厳密に観察すればするほど複雑な世界をあまりに単純化しているようにも感じます。

 

今回はこのモデルをベースにしながらも、あえてより複雑なモデルを形成することを目的として、英語の知覚と認識について駄文を綴りたいと思います。

 

まず、音声→文字→意味ですが、このような直線的な図式そのものを問い直したほうが良いのではないか、そう考えます。

 

なので

   意味

 音声  文字

のような三角形の相互作用的なモデルに変更したく思います。

 

また、「音声」と「意味」の統合ですが、ノイズの存在を忘れてはいけません。つまり、単に「音」から「有意味な音を分節して感じ取る」という行為が、英語の知覚認識ではなされているのではないでしょうか? 英語を聞こうとして、初学者ならまだしも、ある程度慣れてきたら、意味理解をしようとせずに英語を聞くのは稀でしょう。特に能動的な聴覚ならその傾向は強いと思います。

 

つまり、聴覚器官に入ってきた音から「英語の文法における意味処理が可能な文字」に音を分解していると考えられるのです。その過程において、意味理解はなされます。つまり、音声と文字をあえて分けるのではなく、「英語らしい形」のような、少し比ゆ的な表現ではありますが、それらをまずは統合した形で理解しておいたほうがよいと、ここでは考えておきます。

 

そして、意味の理解はさらに進行していき、「constative/performative」の差異を識別することを必要とするとしておきます。これはspeech acts(言語行為)理論をもちろん土台に考えていますが、英語らしい形から、どのような「effects(効果)」を得るのかが大事であることに焦点を当てているためです。

 

そこは神経科学をもっと勉強しなければならないことは承知ですが、現段階の理解で、言語行為理論をベースにした意味理解が有益であると主張しておきます。

 

では以上の記述から英語の知覚と認識をまとめると・・・

 

世界

音   ←→  言語行為による効果 ←→ 英語らしい「形」

            ↓

         知覚認識の接続

               

と乱暴にまとめておきます。

言語行為の効果を中心に置いたのは、知覚認識の接続を継続していくことが、また事前的な英語の知覚認識の主たる目的であると考えるためです。また、先述した通り、意味理解をある程度は前提として、これまで「音」や「文字」とされてきた「英語らしい形」に音を切り取る行為はなされると、ここでは考えているためです。

 

以上になります。結局、直読直解を目標とするのであれば、英語の「文字」を知覚し認識していく行為も、英語を頭のなかで「音」に変換させる必要があるでしょう。そこから、音色をもとに効果が生まれていくというのが、いわゆる「読解」における今回のモデルの適用です。

 

わかりにくくて申し訳ありません。単純なモデルをあえて(今回は少しだけでしたが)複雑な形に置き換えて考えていくのは、思考のトレーニングにもなると学びました。これからも謙虚に世界(注1)を観察していきたいと思います。

 

ーーー

 

注1:これは私個人の趣向による表現で、私はいわゆる「自然」概念を「世界」と表現します。

英語科学習指導要領の歴史ーー意味の歴史社会学的分析

英語科学習指導要領の歴史
ー意味の歴史社会学的分析ー

 和泉敏之

 

1    はじめに
2    意味の歴史社会学
3    英語科学習指導要領の歴史
4    考察
5    おわりに


英語を愛する、我が親愛なる友へ。


1    はじめに

 

英語力とは何なのだろうか? 英語教育に積み重ねられている問題は多いが、その根本には各概念の定義がきちんと なされてないことが 要因として考えられる。今回はその中でも複雑で深い議論を呼んでいる 英語力について 学習指導要領をヒントにして考えてみたいと思う。


 学習指導要領ではそれぞれの時代に合わせて また学習者のニーズに合わせて様々な 英語力観が打ち出されてきた。それを要約して系譜的にまとめてみることにより、歴史学のアプローチを用いることが可能になる。今回はニクラス・ルーマンの ゼマンティク論という アプローチを援用して、学習指導要領が 英語力についてどのようなコミュニケーションの元に設計されてきたか 少しばかり探ってみたいと思う。


 英語力については試験に役立つための英語力から、ビジネスの役立てるための英語力、あるいは深い教養としての英語力など様々な意味合いを持つものと考えられる。そこで 意味について その変容を社会構造と照らし合わせながら 考察している ゼマンティク論を 本小論では 方法としてあげてみたい。ゼマンティク論はこのように意味を取り扱っているアプローチであるが、それは 意味 の歴史社会学 とも呼べる 歴史学についてのアプローチである。以上のような観点で 日本の英語科学習指導要領についてゼマンティク論を用いて考えて、英語力についてのさらなる議論の手がかりとなれば幸いである。

 

2    意味の歴史社会学

 

ではここでゼマンティク論について 概略を説明したいと思う。ゼマンティクとは意味論と翻訳されることが多いが、言語学における意味論とは異なるものである。この分野は 意味 を題材として扱っている。ここで言う意味とは、ルーマン 流に言うならば、社会システムと心理システムにおいて、コミュニケーションを円滑に進める作用を持つ素材 群のことである。分かりにくいのでさらに説明しよう。我々はコミュニケーションにおいて日常生活的なスキーマのみを用いているのではない。もっと 社会や歴史 そして 文化に沈殿している 知恵 の ようなものを活用することがしばしばあるであろう。例えば オンラインで友人と音楽について会話をしている時、そのコミュニケーション 参画者は音楽に関する知恵を共有しているものと思われる。このコミュニケーションを円滑に進めるためのテーマや 題材が 意味を生成する源である。ではどのようにして コミュニケーションは接続されていくのであろうか? これもルーマンに依拠して言うならば、可能性と現実性を結合させる働きを持つのが 意味ということになる。例えば 英語教育について語り合っている時、教養主義実用主義という言葉から何を想像するであろうか? 教養主義とは 文法 訳読式のことを想像するのかもしれない。あるいは 文学作品のことを想定するのかもしれない。ここでコミュニケーション 参画者は教養主義のことをポジティブに、そして受験のテクニックとは 相性があまり良くないものとして考えていることにしよう。そのように要素をだんだんと 限定していって、つまり 複雑性を 縮減していって、コミュニケーションが円滑に進んでいくようにする、そのような働きをコミュニケーション 自身が持っていることになる。先ほど述べた 教養主義については、あらゆる意味の可能性から、ここでは 文法訳読式や文学作品の鑑賞をお互いに想定していることとする。つまりそれらの現実性が可能性と結びついたのである。こうして このコミュニケーションにおいて、教養主義は上記のような意味を持つようになった。


ここで問題となるのはこの意味というのは時代が変遷するに従って変容していくものであるということである。特に 社会構造との関連から意味は変容していく。これを応用させて 経験主義的な研究を行うことも可能になる。すなわち 社会構造との関連性から意味の変容を探っていくというアプローチである。


 今回の小論では 英語力という意味についてどのようなコミュニケーションが接続されてきたかについて 探求したいと思う。英語力といっても様々な捉え方ができるであろうが、日本の制度上の問題において、強い権力を持つ コミュニケーションとは、学習指導要領に他ならないと思う。それを踏まえて 英語科学習指導要領において、英語力という意味が どのような歴史をたどってきたかについて考えてみたいと思う。そしてそれらをその時々の時代背景、つまり 社会構造と照合させて、議論をより深みのあるものにしたい。ではここから 英語科学習指導要領について簡単にその変遷をたどってみたい。ここでは極めて ではあるが、英語 科学習指導要領の概要をまとめたものを時系列的に列挙していきたいと考えている。

 

3 英語科学習指導要領の歴史

 

 ここから 英語 科学習指導要領の歴史を紐解いていきたいと思う。英語科学習指導要領の要約を 下記に時系列的に示した。

 

S22

アメリカ教育使節団の報告書を元に作成される。「試案」として発表された。英語に 関しては、選択科目であった(地域による必要性の格差とアメリカのコア・カリキュラム が理由)。また、パーマーの英語教授研究所の影響が強く見られる(教育課長顧問が 研究所と関係のあったデル・レー)。聞く・話すと読む・書くに区分。‘Let's learn English'も発行された。「我々の心を英語を母語とする者の心と同じように働かせる」 。技能別の教材一覧。

 

S26

中央集権的権威を捨てた文部省が、教師の参考書として作成。膨大な量におよび、 英語版も同時に作成された。デューイの経験主義に基づいていた。

 

S33-35

日本の独立により、法的拘束力を持つようになると解釈されるようになった。科学技術の発達を背景とし 統性を重視したカリキュラム。英語に関しては、「具体目標」のみに限られている。実用主義への転換であろう。このとき、「言語材料」と「学習活動について学年別指定 が始まった。また、アメリカ国民に対する偏重ぶりも目立った。生徒の能力や進路に 応じて「英語A (実業高校用)」と「英語 B (普通高校用)」のコース制。

 

S44-45

1950年代、スプートニクショックにより、科学技術が発展。これに伴い、「教育内容の 現代化が図られた。「基礎・基本」『集約と精選』が重視された。実際は「新幹線授 業」といわれるような、高速の授業により、落ちこぼれが生まれた。英語に関しては、 「言語活動」が誕生。言語材料は言語活動のためのものとの見解であろう。「初級英 語」と「英語会話」が登場した。

 

S52-53

「文法」が消える。

前学習指導要領の反省を踏まえ、「ゆとりある充実した学校生活」をうたい文句に作 成された。英語に関しては、「概要・要点の考え方を導入。また、「英語Ⅰ」 「英語Ⅱ」 「英語IIA(英語会話)」 「英語ⅡB(リーディング)」 「英語IIC(ライティング)」が解説さ れた。このとき、「英語科」という学校・コースが新設された。

 

H1

新たな学力観を元に作成された。「自主性を重んじる教育」「心豊かな人間性の育成」がキ ーワードであった。英語に関しては、グローバル化の背景を元に、「コミュニケーショ ン」や「文化」の言葉が始めて使用された。さらに目標が「態度」にまで及ぶに至った。 「オーラルコミュニケーション A・B・C」 や 「リーディング」「ライティング」が誕生した。

 

H10

週休完全五日制開始後、初の指導要領改訂である。1996年の「生きる力答申」によ り、「生きる力」が重視された。それにより、総合的な学習の時間が誕生。小学校では 英語活動が行われることとなった。英語に関しては、中学校での外国語の必修化、言 語の働きと場面の提示、実践的コミュニケーション能力の重視が挙げられる。また、 観点別評価も導入された。

 

H20

前学習指導要領の反省点を明示した指導要領。S52-53 年より開始された「ゆとり」 からの脱却を試みている。英語に関しては、小学校での週1の英語活動の必修(4技 能を包括的に捉える、「コミュニケーション英語Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」の誕生、高校での「英語で授業を行うことが基本」など。

 

H30

グローバル化、AI、選挙権年齢及び成年年齢が 18 歳の引き下げなどの影響により、「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱を中心とする カリキュラムマネジメントが求められる。外国語科の目標は,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの資質・能力を明確にした上で,各学校段階の学びを接続させるとともに,外国語を使って何ができるようになるかを明確にするというを重視する。また、「主体的・対話的な学び」が強調された。目標実現のための言語活動について,CEFRを参照しながらその内容を設定している。高校の科目はコミュニケーション英語基礎、コミュニケーション英語Ⅰ、コミュニケーション英語Ⅱ 、コミュニケーション英語Ⅲ 、英語表現Ⅰ、英語表現Ⅱ、英語会話、英語コミュニケーションⅠ、英語コミュニケーションⅡ、英語コミュニケーションⅢ 、論理・表現Ⅰ、論理・表現Ⅱ 、論理・表現Ⅲ となった。ほかにも小学校の英語活動の拡大など。

 

 以上が 英語科学習指導要領の大まかな歴史を表す 要約である。もちろん私が主観的に 恣意的に 抜粋した きらいは認めざるを得ない。だがこのように英語科学習指導要領の概要を少しずつ 示すことによって、その歴史を少しは 示せたのではないかと考えている。


 次に この学習指導要領の変遷について、先ほどの 意味 の歴史社会学、すなわち ゼマンティークの問題意識によって分析を試みたいと思う。

 

4 考察

 

 以上の歴史を鑑みて、文部科学省における委員会で、以下の英語力に対するゼマンティクによるコミュニケーションが行われ、学習指導要領が決定されたと考える。簡略的ではあるが、図に示したい。

 

    ゼマンティク           社会構造
英語 市民的教養主義         ←敗戦からの復興

英語 経済的実用主義         ←高度経済成長

英語 経済的コミュニケーション主義  ←グローバル化 ×国際化
↓ 
英語 経済的ツール主義        ←主体的・対話的な学び が独り歩き

 

 教養主義実用主義とは、古くから英語教育界隈で浸透した用語である。それをヒントにし、上記のゼマンティク上の意味を考えた。それに先行する社会構造の(微々たるかもしれないが)変動を右に示した。以下で、順に説明していく。


 まず 戦後間もない頃の市民的教養主義である。第二次世界大戦における敗戦によって、日本は その根底を覆す 改革を求められた。その中で、英語を敵対語として考えるのではなく、英語 に対して 親和的な態度を取ることが コミュニケーションによって調停されたようである。アメリカ式のカリキュラム やデューイの教育論を用いているのも、アメリカに対する親和的な態度が根底にあるということが伺えよう。「戦後」はいつ終わったのかというのは 様々な議論がなされているが、日本が新しい日本として生まれ変わった姿を告知するためにも、アメリカ式の英語教育は大いに影響力を持っていたのだと思われる。話は変わるが、明治維新から不平等条約の改正に至るまで、日本は近代化というラベルにより様々な労力をふるってきた。そのような外から見れば センチメンタルとも言える 努力が この時代にもその香りを見せていると思われる。


 では次に、高度経済成長時期の経済的 実用主義である。これは日本の独立から、東京オリンピック大阪万博 などの世界への日本の国力のアピール、モーレツ社員という用語で表現された日本人の勤勉 的な態度などが社会構造の中に組み込まれていると考えられる。無論 世界の影響を受けた日本の中で 科学技術の進歩の意義は外せないであろう。こうした社会構造を受けて、英語力とは経済を豊かにさせるための実用的なものでなくてはならないという意味がある程度調停されたと考えられる。英語力に関して政府以外の文脈でも、様々な論争が巻き起こされた。このような中で、英語力とは 国家を豊かにさせるための強い道具として意味が 調停されてきた。それは長年にわたって続き、ジャパンアズナンバーワン という スローガンが建てられた時期まで継続されたものだと思われる。文法は役に立たないから英会話をもっとさせようという風潮 は実はこのような時期から発生していたのであろう。途中で学校における生徒の暴力や荒れの課題を克服するために、広い意味でのゆとりの教育が実行に移されたという経緯 もある。だが 英語力はやはり 役に立つ道具としての意味が強く、それを達成するために学習されなければならないという価値観は強く残っていたのであろう。


 時代は昭和から平成に変わり、世界を見ても冷戦の集結などによって 英語力に関するコミュニケーションも揺さぶり がかけられた。ここでは 国際化というより グローバル化という世界の新しい「秩序」のもと、英語力に関するコミュニケーションが進んでいったと考えられる。すなわち 他の文化や国家との協調的な国際化というよりも、時空の圧縮による国家経済競争力の強化という目的を達成するために、他国との意思疎通をより充実させるという価値観である。日本の英語教育におけるコミュニケーションもこの影響を強く受けたと思われる。先ほどの役に立つ 英語 という意味からさらに進んで、経済的コミュニケーション主義とも言える、実情は 英会話への 盲信 なのであるが、教養主義からの脱却が大いに見られたのが この辺りからだと思われる。グローバリゼーションとコミュニケーションというのは 強いスローガンになり、英語力を英語 会話力という価値により測る価値観の理由つけとなった。英会話教室の増大 などがここで顕著になった。そして心の教育、生きる力、実践的コミュニケーション能力、コミュニケーション能力、というような 様々な「力」がブームになった時代とも言えよう。これは 能力主義成果主義を重んじる 新自由主義的な価値観へとつながる意味である。


そして 平成から令和に変わり、英語力という意味は 若者の起業ブーム や1人1台のスマートフォン時代におけるインフルエンサーという新しい価値の生成により、主体的・対話的な学びというスローガンが無批判的に世の中に浸透していくことになった。この時代はともすれば 特に思考停止に陥ってしまう危険性があるような風潮が見られるのも一つの解釈である。なぜなら SNS などの(悪)影響によって、読書 離れもさらに深刻化し、学習指導要領のテーマである 思考力という概念が 軽視されているという 逆説的な傾向があるからである。こうして主体的・対話的な学びというスローガンは英語力という意味にも大きく影響を与えるようになった。その象徴 がアクティブラーニングである。また対話という概念を深く思慮する識者は決して多くなく、空洞化した概念による教育のコントロールとも言える 、それまでにはない事態に陥っているような気がしてならないのが私の意見である。アクティブラーニングと経験主義教育は 親和性が多いにあり、再び アメリカ式の教育観がここで再評価されているというのも 注目すべき ことであろう。それらは 新自由主義的資本主義という社会構造において、それをさらに強化させるためのいわば オイル として捉えられるのである。競争と格差を是正するのではなく、そのエンジンを強化するために使われるオイルである。英語力という意味は この令和の時代において、新自由主義的資本主義のからくり でもあり、歯車ともいえるものに陥ってしまっていると考えられる。


ここまで 英語力の意味を 社会構造と照らし合わせて考えてきた。あまりに 新自由主義的資本主義の価値観にとらわれすぎていないだろうか。英語の学力をこのような経済的ツール とも呼べる いわば 道具として捉えていては、今後ますます 普及していく AI のような人間の能力 (ここでは日本人の能力)を拡張させるための単なる補助的道具としてしか英語のことを捉えられなくなるであろう。CEFRによる複言語主義の価値観とはまるで 画一をなす 現状 そして未来の予測となっている。また そもそも日本語を扱うことが身体・ 精神的な制約により困難な日本人学習者についても視野が及んでないのは 、一言で言うと 差別というラベルを貼ることができるであろう。補助的道具は人間の能力を確かに拡張させるものであるが、そもそも人間の能力は 拡張させるべきなのかということを今一度 我々は考えるべきではないか。

 

5    おわりに

 

以上の小論を踏まえて私なりの小さな小さな言語政策提言を行いたいと思う。それは外国語教育のための英語教育は「平和教育」のために行われるべきではないかという提案である。英語は世界に広がっていく中で特に合理性が 規則に及んでいった言語である。そのような特徴をもつといえる「 英語 」という 外国語 を最初の扉として、外国語の世界に学習者をどんどん 誘っていきたいところである。ここにある 価値観は日本語という母語だけが 言語ではないという それである。普段日本語というフィルターを通じて しか物事を見れなければ 世界が狭くなるし 思考は硬くなっていく。だが ひとたび 外国語に触れてその世界をどんどんと 内在化していくことが試みられれば、世界は、 学習者にとって開けたものになっていくであろう。先ほど指摘した 日本語を困難に操る 学習者に対しても、 例えば 日本語手話とは違う 海外の手話、 日本語点字とは異なるブライユ などを提示することはいくらでもできよう。我々は 改めて日本語 ・ 英語 それだけでなく 言語というものについて さらに メタ的に考えなければならない地点に来ているのではないか。


私は日本語(しかし、そもそも日本語とは何なのだろうか?)を中心としたコミュニケーションでは特に昨今 衝突のような現象が避けられる傾向があることを危惧している。コミュニケーションとは 合意をもとにしたものではなく、 極めて複雑で不確実なものである。誤解というコミュニケーションも肯定的に捉えていかなければならない。そんな中 日本語のみを使用していては コミュニケーションの醍醐味は味わえないのではないか。真の相互 文化理解とは喧嘩をしてでも仲良くやっていく力のことだと私は考えている。外国への眼差しを深め 広げていくことによって、日本語中心主義 あるいは 英語 一辺倒の価値観ではなく、自身の弱さや 未熟さを痛感し それに対して少しでも克服しようという人間的な向上心がそれこそ学習者が学習者を自ら教育するのではないか。昨今 教育の世界にはびこっている コーチング や メンターというような教師観や教育観にも、私は 懸念を覚えている。学習者は必ずしも 成長を1本の道、そしてただ一つの目標として動いていくわけではない。人間は常に変容し、 試行錯誤しながら、 思慮を踏まえて 自身を洗練させていくものである。教育とは 学習者が自ら自己について言及し、生成していく ナラティブと言っても過言ではないであろう。


以上述べたような価値観は、最終的に他者を大切にする 平和教育へとつながるものだと 私は信じている。教室の中での 言語活動 1つとっても平和教育へとつながる道は築かれているのである。私をはじめとした英語教育 ・ 外国語教育に関心を持つ 市民は さらに 視野を広げ 学びを継続させていかなければならないと反省している。


参考文献
江利川春雄(2023)『英語と日本人』筑摩書房
高橋徹(2002)『意味の歴史社会学世界思想社
ルーマン著、徳安彰訳(2011)『社会構造とゼマンティク(1)』法政大学出版局
ルーマン著、馬場靖雄訳(2020)『社会システム(上)(下)』勁草書房

 

参考サイト
国立教育政策研究所『学習指導要領の一覧』
https://erid.nier.go.jp/guideline.html
2024年04月28日に閲覧。


Without the meaning, the words 'I love you.' couldn’t go anywhere. 
No matter how long time passes, the words 'I love you.' wouldn't care. 

第二次世界大戦後の世界(概要)

第二次世界大戦後の世界秩序について話し合うマルタ会議で、すでに冷戦は始まっていました。その後、アメリカーソヴィエトを中心に世界は回ります。アメリカーソヴィエトの代理戦争も度々起こりました。一方、欧から国家設立の約束を守られなかったユダヤの人々はエルサレムを求めてイスラエルという国家を樹立します。これが中東戦争の発端です。また、米ソはキューバ危機などを経て、「雪解け」の時代に入っていきます。途中、中国とソヴィエトの対立も起こりました。イラン・イラク戦争なども起こり、冷戦という「一触即発」でギリギリ開戦はなされない世界構造があるなかで、各地で戦争や紛争は耐えませんでした。1980年代には自由主義の価値観が蔓延り、東側諸国の人々はさらなる不満をつのらせました。そして、1990年代ごろ、ソヴィエトでは初の大統領も誕生します。ヤルタ会議で冷戦の事実上の終了が告げられました。やがて、ドイツのベルリンの壁崩壊(誤解による崩壊)、ソヴィエトでのクーデターによるソヴィエト崩壊に至りました。世界を見渡せば、国際化からグローバル化への転換、アメリカの単独ヘゲモニーなどが顕著でした。それに対して不満を持つ勢力もいました。そして、2001年ニューヨークで同時多発テロが起こります。それまでにはあまり見られなかった「イデオロギーの戦争」が始まってしまいました。アメリカの報復はアフガニスタンイラクに及びました。時代はスマホを誰しもが持つ2010年代に流れ、ポピュリズム政治とネオリベラル経済の深刻化が進みました。それに耐えきれなかったのは、2020年からのCOVID-19による各国の対策の遅れとして顕在化したように思えます。協調志向から分断志向に世界は変容しました。その後は生成AIが台頭していますが、果たしてこれが賢者の石になるのか毒になるかは今のところ不明です。世界はウクライナ戦争、イスラエルガザ地区の戦争など、争いは終わらないままです。ペシミスティックになるのではなく、冷静に慎重に歴史から考えていきたいと思います。

 

 

 

和泉敏之・自伝(動画)

2024年04月01日に自伝をリリースします。

 

それに先駆けて、生成AIで自分の簡単な自伝動画を作りました。ぜひご覧ください。

 

○幼少期

https://youtu.be/3dgCuezwD6s?si=KfwFokqIP1dK0K_M

 

○小学生

https://youtu.be/Hg4Qrirm1d4?si=eqAdnnjyC0Hdx_Zf

 

○中高生

https://youtu.be/egWPiUe_kJM?si=cu9s_9matup-G4R2

 

○大学生

https://youtu.be/ByFqhxrafgk?si=2AHXxxOFLBUsY5_0

 

○留学生

https://youtu.be/T92bFJRgfVo?si=Y19JovvjtXYhm2Ct

 

○教師

https://youtu.be/elEOxZEi1yY?si=VqJHEqj1BIlmablp

 

○作家

https://youtu.be/5lwtS5G691w?si=1scjgN0pqJMRPc8D

 

○東大

https://youtu.be/6YT3eNa3x2M?si=aOSrUv2yUTxwniko

 

○それから

https://youtu.be/kIDE55ISbaM?si=cp6j1r9otyxpAdJ-

 

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